25/11/19 新潟県立三条高等学校 グローカル探究/論理国語

1.カリキュラム・授業の様子

 新潟県立三条高等学校(以下、三条高校)は、普通科・理数科のある高校です。文部科学省のWWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業に2021年度に採択され、クリエイティブでグローバルな視点を持つ人材の育成を目指しています。10月には「WWL高校生国際会議」を開催しました。

WWL事業のウェブサイト:https://b-wwl.jp
WWL高校生国際会議のパンフレット:https://sanjou-h.nein.ed.jp/docs/R5kokusaikaigiri-huretto.pdf


 「グローカル探究」は、1年生はグループで探究し、身近な社会問題を知る・理解することを目指します。2年生はクラス横断のテーマ別グループ(医療、教育、自然災害、人口まちづくり、地場産業、食)を編成し、地域のより具体的な問題に取り組み、市役所や地元企業の方との交流やフィールドワークに取り組みます。3年生は進路と結びついた個人探究に取り組みレポートを作成します。こうした取り組みと、県内外の高校生・留学生を招いて英語で世界の問題について議論する「高校生国際会議」を連動させているところが特徴です。

 この日は高校1年生の探究、2年生の論理国語の授業を拝見しました。1年生の探究はグループテーマの設定、現状把握(主に文献調査)、リサーチクエスチョンの設定、仮説設定、探究活動と取り組みを進めています。テキストには「課題研究メソッド」を活用されていました。12月の分野別発表会に向けて、スライドをまとめている場面を拝見しました。

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 1年生の探究の授業は学校図書館で実施しています。現状把握の段階では、新書、ノンフィクションの読書、点検読書(拾い読みなどの手法)のワークに取り組み、読んだ本をレフナビに登録する、ジャパンナレッジschoolの事典から定義を確認するなど、司書の先生と連携し、問題についての一般的な理解を確認した上でフィールドワークに取り組むよう指導されています。統計資料も必ず参照し、データの裏付けのある仮説をつくることにしています。

学校図書館での探究の授業

 生徒たちは紛争、PFAS(フッ素化合物)や飢餓、薬物など、さまざまなグローバルな社会問題について調べていました。Googleスライドを使ってグループでスライドづくりをしているので、調べた情報は共有して進めたいところ。そこで、レフナビのタグ機能を紹介しました。「カスタムタグ」を使うことで、任意の生徒で小グループをつくり、文献を共有できました。ただし、カスタムタグは先生だけが作ることができます。その場で設定してみると「あ、私の画面にも出てきた出てきた!」と情報共有を進めることができていました。後日、多くの生徒が参加するグループでカスタムタグの作成・共有をさらに簡単にできるようにレフナビをアップデートしました。

共有・出力したい文献を選択する

 スライドの最後には、参考文献のリストを掲載します。このリストの作成もレフナビに情報をまとめていれば、「出力」ボタンですぐに出せます。三条高校では「学びの技」のフォーマットが指示されていましたので、生徒に紹介するとこちら好評でした。

 2年生の論理国語の授業では、探究で取り組んだ内容をレポートにまとめる活動に取り組んでいました。ロイロノートを活用し、問題意識のところはピンクのカード、方法や結果については水色のカードとレポートのブロックごとに色を変えてまとめることで、どのパートを書いているのか簡単に把握できます。こちらでもレフナビの文献出力について紹介しました。2年生の場合、クラスを横断してグループ編成をしていますが、レフナビは学年・学級に紐づけて管理していないので、学校のグループ編成に応じて活用いただいています。

論理国語の授業の様子

2.インタビュー

 授業者の押木和子先生に探究とレフナビの活用についてインタビューしてみました。

探究のテーマを自分事にするために

 1年生の探究では以前、SDGsをテーマに取り組んでいました。でも最近は中学校でもSDGs取り組んでいるところは多いですし、先に課題が示されてしまっているので、どうしても他人事になってしまうところがありました。それで、もっと自分の身近なテーマを知ってもらうために「社会問題」としています。グローバルな問題、地元の問題いろいろありますが。1年生では問題の概要をしっかり理解して、2年生ではより具体的な活動に取り組むので、2年生の方がより地域にフォーカスしています。

 2年生では、今年から特に市役所の方や地元企業の方が多く協力してくださってます。三条市は地域で人口減の食い止め、空き家対策、シャッター街対策など地域の活性化は大きな課題です。市の方が色々人材を紹介してくれたり派遣してくれたりしてくれているのが探究の支えになっています。今日の探究の時間にもフードバンクの活動紹介のために市民活動支援センターの方や、三条市の国際交流員の方が来校されていました。理数科では三条市立大学との連携協定を行い、サポートいただいています。

 探究はとにかく最初に教員研修が大事ということで、WWLとは何かから始まって体制づくりを進めてきました。グローカル探究の授業には、担任と副担任と、私たちWWL事業部が関わっています。1年生は学級単位、2年生からは帯で取り組むのでグループもクラスを横断して編成しています。

情報収集の指導における課題と工夫

 探究を指導していての悩みどころは、生徒がすぐにアンケートしたがることです。でも、本当に有効な質問を作れない。分析の仕方もよくわからない。すでにある統計資料をまず使ってみることを指導しています。 それからレポートの書き方をまとめて授業で教える時間を確保するのも悩みです。生徒たちはスライドを作るのは得意なんですが、論理的に文章をまとめるのは苦手です。そこで今年は2年生の論理国語で作文の授業に取り組んでみました。去年も簡単な探究概要は書いたんですが、今年はA4で2000字〜3000字のレポートを課します。

 ジャパンナレッジschoolも活用していますが、百科事典を使う習慣が小中学校でほとんどないようです。調べるときに辞書代わりにジャパンナレッジ開いて定義を確認するように指導しています。信頼できる情報を確認するようにさせたいところです。

 今年から1年生の探究の授業を図書館でするようになったので、司書の先生との連携が進んでいます。新書などを読むことをしていたので、図書に対する抵抗感はなさそうです。司書の先生は探究の会議にいつも参加されていて、生徒たちのテーマの動向とか、教員の困り感を共有しています。県図書館の資料なども用意してくださってありがたいです。ただ、置いておくだけでは生徒は見ないので、司書の先生から手渡すこともあります。今日も新聞の切り抜きを渡してくださったりしていました。

 それから生徒たちの傾向として、自分たちのテーマにぴったりの資料を探そうとしがちです。同じテーマでも視点が違うとか、同じ方法でも対象が違うといった、少しズレてる方が本当は使えるのですが、そこが指導しきれてないと思っています。

タグを使った情報共有をアドバイスする押木先生

レフナビへの期待

 レフナビを使っていて、生徒が飽きずに書き続けたい、残したいって思わないと続かないと思うんです。私たちが「記録して」って言わなくても、「これ、やっておこう」と思うものになればいいと思います。これ便利だな、つながるなと生徒が思うには、参考文献一覧だけでなく、レポートに引用するときに使いやすい機能があるとよいよいと思います。引用したいところ、この場面でこう使いたいってメモはどこに書いたらよいですか?

→レフナビは文献ごとのメモ欄とホーム画面のメモ欄と2つのメモ欄があります。文献ごとのメモ欄には教員からもコメントを書くことができます。

 メモ自体を探しやすくなって、レポートにすぐつながるとよいなと思います。そうすると、記録だけではなく構想メモのように使えるようになります。レポート指導を今後充実させていくためにも、レフナビの活用、工夫していきたいと思います。

25/11/19 新潟県立三条高等学校 「グローカル探究/論理国語」
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